大正新版画運動の先駆け、橋口五葉の代表作です。
昭和62年に「化粧の女」と二枚つづりの切手が発売されています。
湯上りでしっとりと濡れているであろう黒髪をつげの櫛でとかす女性が、シルバー一色の背景から浮かび上がるようです。さっぱりとした藍の浴衣姿とそこからのぞく白い肌は、清涼感のある上品な女性美を表現しています。
涼しげな寒色系の画面の中で浴衣の帯の朱色が差し色となり、この絵を引き締めています。
肉体の非常に細い輪郭線に対して浴衣の線を強くリズミカルに描くことで、はかなげな美しさが際立ちます。
この作品で特筆すべきは、やはり髪の毛の描写でしょう。
五葉は自ら彫師や摺師と密にコミュニケーションをとり、理想の一枚絵として版画を制作していました。美しくうねる髪の毛一本一本の繊細な仕上がりは、江戸浮世絵版画伝統の高い技術が見て取れます。雲母摺や毛割といった技術はしっかりと継承しながらも、モデルの女性は写実的で、大正浪漫が香る近代的な印象です。
価格 50,000円(シートのみ)(消費税込/55,000円)